私のポルタフォリオ

某音楽系大学を卒業後、府立支援学校教諭に。「継続は力なり」の精神で声楽も地道に続けております。時々奥さんが記事を書くこともあります。

『フィデリオ』シリーズ 〜オペラ史上最も勇敢な女性 レオノーレ〜

ベートーヴェン唯一のオペラ『フィデリオ』をご覧になったことはありますか?

フィデリオとはレオノーレという女性が男性に扮して名乗る仮の名前です。


レオノーレは男装し下働きとして刑務所に潜り込んでいました。
刑務所長ドンピツァロの不正を暴こうとして不当に捕らえた、夫フロレスタンを救い出すためです。
2年の歳月を経て、レオノーレはついに夫の救出に成功します。


ベートーヴェンフランス革命やナポレオンを支持する共和主義者でした。
(ナポレオンについては、彼自らが皇帝になったことで失望を露わにしています)
市民が権威を振りかざす悪に立ち向かって打ち勝つストーリーは、まさにベートーヴェンの思想信条が色濃く反映されたドラマといえます。


オペラに登場する女性は勇敢なキャラクターが多いですが、『フィデリオ』レオノーレは群を抜いています。
その逞しさ故、看守長の娘に結婚を迫られるほどでした。

所長ドン・ピツァロが自身の罪を闇に葬るために夫を殺す算段をしていることを知った直後に歌われるアリアでは、狼狽することなく、今こそ夫を救う時だと決意を新たにします。

「心の内なる力に従おう。妻の愛の務めを全うせよとの内なる声が私を勇気つける」

Allegroになり、最高音に向かって駆け上る上行音形がレオノーレの確固たる意志を表現しています。
歌い手にとって相当な難曲ですが、拍手必至の名曲です!

クリスタ・ルードヴィッヒの名演