私のポルタフォリオ

某音楽系大学を卒業後、府立支援学校教諭に。「継続は力なり」の精神で声楽も地道に続けております。時々奥さんが記事を書くこともあります。

『フィデリオ』シリーズ ~悪の権化 ドン・ピツァロ~

前回はこのオペラの主人公レオノーレについて、簡単に解説しました。

 

imotaka.hatenablog.com

 

今回は敵役である刑務所長ドン・ピツァロについてお話します。

ドン・ピツァロは自身の悪事を明らかにしようとしたフロレスタン(レオノーレの夫)の口を封じるため、刑務所の地下牢に監禁しました。

2年経ったある日、フェルナンド大臣が査察に訪れる報せを受けます。

ドン・ピツァロは不当に投獄していることが大臣に明らかになる前に、フロレスタンの命を奪うことを決意します。

ドン・ピツァロ登場で歌われるアリアの歌詞が以下の通りです。

 

 

≪ドン・ピツァロのアリア≫

ああ、何という機会だ

復讐して思いを遂げるのだ
運命を呼び寄せたのだ
あやつの心臓に穴を開けてやる
おお、なんという喜び、なんという幸せ!
 
盗人だと大声で嘲られ
打ちのめされるところだった!
しかし今、俺自身の手であの人殺しの息の根を止める時がきた!
 
あやつの最期の瞬間に傷口に剣を当て
あいつの耳元で叫んでやる
「勝利だ、俺の勝ちだ」と!
 
 
自分の悪事を公表しようとした奴に復讐してやろうという悪人の中の悪人、それがドン・ピツァロです。
 
このオペラは典型的なジングシュピール形式で書かれ、冒頭のヤキーノとマルツェリーネのやり取りなど割と牧歌的な雰囲気から始まるのですが、このドン・ピツァロの登場アリアを皮切りに、一気にシリアスティックなドラマが展開していきます。
今回のお勧め音源はこちら!
 
YouTubeで全曲版しか見つけることができませんでしたが、35分30秒辺りから5分だけでも見てください。
ドン・ピツァロ役は木村俊光さんという日本人のバリトンです。
明瞭な発語、響きの豊かさともに日本人離れです!
これだけ歌えるバリトンが日本にもいるのかと驚きでした。