今日は発達障害と混同しがちである愛着障害について解説したいと思います。
ADHDが行動の問題、自閉症が認知の問題であるのに対し、愛着障害は感情の問題です。
なので、その原因や教育・支援の仕方も当然発達障害のそれとは異なります。
1.愛着障害とは
愛着(アタッチメント)とは特定の人との情緒的な絆で、その絆が育っていないことが愛着障害として子どもに表れます。
愛着は子どもにとって3つの機能があります。
恐怖や不安から守ってもらえるという安全基地機能、そこにいると穏やかな気持ちになれるという安心基地機能、そこから離れても大丈夫で、離れて行ったことを報告して認めてもらえる探索基地機能の3つです。
愛着障害の子どもには「言うことを聞かないのに文句や要求ばかりする」「問題行動を注意すると、余計にその行動が増える」「突然激しい暴力をふるい、抑えても収まらない」などの特徴が表れます。
2.愛着障害の原因
愛着の問題=親の育て方の問題であるとよく勘違いされていますが、必ずしもそうではありません。
愛着障害とは関係性の問題であり、親子相互の相性の問題であるといえます。
虐待やネグレクトを受けた子どもだけでなく、一般的な家庭環境で育った子どもにも増えているのが実情です。
3.愛着障害の支援(愛着修復プログラム)
愛着障害の子には、特定の人との情緒的な結びつきを経験させてあげることが必要になります。
愛着の問題は幼少期を過ぎると手がつけられないと思われがちですが、そんなことはありません。
子どもはいつでも・誰とでも、大人から適切な関わりがあれば、愛着を形成することは可能です。
具体的な取り組みは以下の3つです。
①キーパーソンの決定
②感情学習
③先手の教育・支援
①キーパーソンの決定
愛着とは特定の人との情緒的な絆であるため、一対一の関係を育むことが大切です。
キーパーソンとは「その子のことを一番知っている人」です。
常に行動を共にするのは現実的ではないため、周りの大人がキーパーソンに情報集約し、子どもからみて「自分をよく見てくれている」と感じられる状況を作りましょう。
②感情学習
愛着に問題を抱える子どもは、他者の感情を推しはかることが苦手です。
そのため、何をして(行動)どうなって(認知)どんな気持ちになったか(感情)を振り返り、行動と認知と感情を連結させる学習が必要になります。
この時もキーパーソンと一緒に学ぶことで、安全・安心基地の機能を高めることができます。
③先手の教育・支援
大人が主導権を握って教育・支援にあたることが大切です。
指導者があるべき行動を促し、子どもが達成できたらそれを褒めるという流れを作りましょう。
「子どもから称賛を求められてから褒める」では後手に回ってしまい、逆効果になります。
「叱る」ことも行動改善すら効果はありませんが、良くないことであることを知らせる情報提供機能はあります。
愛着障害の子どもたちは感情発達が未熟です。
一旦負の感情を持つとうまく処理できず、不安や恐怖がどんどん膨らんでしまいます。
そのため、罪悪感や恥ずかしさから行動を改めたり、成功体験を意欲につながることが難しい傾向にあります。
子育てや教育にあたる方は絶対に一人で抱え込まないでください!
関係機関やチームで連携し、長期的な視野で支援していくことが鍵になります。
参考文献『やさしくわかる!愛着障害 理解を深め、支援の基本を押さえる』