人は何か行動を起こした時、自分にとって良いことがあったり、あるいは悪いことがなくなると、再び同じ行動を取るようになります。
応用行動分析学において、その現象を『強化』といい、逆に行動が減っていく場合を『罰』といいます。
また、行動しても今まで強化されていた結果が起こらないことを『消去』といいます。
前回の記事で解説した『ABC分析』で行動の目的を見立てたら、次は強化と消去の理論を使って不適応行動を変化させていきます。
前回と同じ事例を使って考えてみましょう。
≪事例≫
母は小学1年の妹の宿題を一緒にしてから夕飯の準備をします。夕飯の支度の間、兄妹は居間でテレビを観ていますが、兄が妹の髪の毛を引っ張ってケンカになることがよくあります。母は兄に注意し、落ち着いたらキッチンに戻りますが、しばらくするとまた同じことが繰り返されます。普段は兄妹の仲は良く、揉めることは殆どありません。
ABC分析により、兄は『母にかまってもらえる』という結果を望み、『妹の髪の毛を引っ張る』行動を繰り返していることが分かりました。
母の対応が兄の行動を強化していたのです。
では、その行動問題を減らすにはどうすればいいのでしょう。
まさか、髪の毛を引っ張っている行為を放置するわけにはいきませんよね。
なので、行動が起きる前に何か手立てを打つ必要があります。
一つは、兄の『母にかまってもらう』目的を別の形で叶えてあげることです。
例えば、母が料理の前に兄と過ごす時間を設ける(妹とは宿題を一緒にしている)、一緒に夕食の準備をする等々。
あるいは、夕食準備の間、兄が夢中になれる好きなものを用意しておくことも効果的かもしれません。
このように、対象者の目的を行動問題と無関係に豊富に与える方法を『非随伴性強化』、
好きな物や活動をたくさん用意しておくことで不適応行動を減らす方法を『環境豊穣化』といいます。
教員をしていると、不適応行動に対する注意がそれを助長させていると分かってはいるけれど、放置するわけにもいかず…という状況が度々あります。
もちろん、毅然とした対応が必要な場合もありますが、大人が正しいことを眼前に突きつけるほど、ドツボにはまってしまう子がいるのも確かです。
個のニーズに応じた教育が求められる現代において、応用行動分析学の視点は非常に有効だと思いました。