私のポルタフォリオ

某音楽系大学を卒業後、府立支援学校教諭に。「継続は力なり」の精神で声楽も地道に続けております。時々奥さんが記事を書くこともあります。

こどもの不適応行動には必ず理由があります

長い在宅勤務が続く中、支援教育のスキル向上に繋がる本がないかと探した結果、司書教諭から薦められた本を読んでみることにしました。

 

www.chuohoki.co.jp

 

応用行動分析の基礎的な知識・考え方が具体的事例を基に分かりやすく書かれた良書です。

数ページ読んで「自分が知りたかったのはこれだ!」と思い、久々に一冊の本にじっくり時間をかけて読み切りました。

 

まがいながらも10年間支援学校に勤める中で、自分なりに感覚的に行っていたことが理論的に整理される思いがしました。

自分が学んだことを定着させるための記録を兼ねて、記事にすることにします。

 

 

ABC分析

応用行動分析とは、行動の前後を分析することでその行動の機能(目的)を明らかにし、前後の環境を操作して問題行動を解消する分析方法です。

その最も基本となる考え方がABC分析

 

A[きっかけ]→B[行動]→C[結果]

 

更にA[きっかけ]は直前事象状況事象の2つに分かれます。

状況事象には、生物的条件(睡眠・体調etc.)、社会的条件(集団・規模etc.)、物理的条件(気候、スケジュールetc.)があります。

 

A[直前事象・状況事象]→B[行動]→C[結果]

 

事象をこの図に落としこむことで、行動と環境の関係性を発見し、対象者に対する適切な関わりを考えます。

何故、そのような行動が起きているかを理解することで、どのように支援するかの対策を考えるのです。

 

[Aがあって、Cになるから、Bの行動をする]を見立てるわけですが、この際に大切なことは、決めつけることなく、思いつく限り対象者の気持ちを推測してから絞り込むことです。

その点、複数の支援者と相談しながら考えるのがより有効的かもしれませんね。

抽象的な表現だと分かりづらいと思いますので、本書にあった事例を使って具体的に説明します。

 

 

≪事例≫

母は小学1年の妹の宿題を一緒にしてから夕飯の準備をします。夕飯の支度の間、兄妹は居間でテレビを観ていますが、兄が妹の髪の毛を引っ張ってケンカになることがよくあります。母は兄に注意し、落ち着いたらキッチンに戻りますが、しばらくするとまた同じことが繰り返されます。普段は兄妹仲は良く、揉めることは殆どありません。

 

ABC分析

A 兄妹でテレビを観る→B 兄が妹の髪の毛を引っ張る→C 母が来て兄に注意する

 

②兄の気持ちを思いつく限り推測する

「お腹すいたな~」

「テレビつまんないな~」

「今日のご飯きらいだな~」

「お母さん来てくれないかな~」

 

③兄の気持ちの中からABC分析に当てはまるものを選ぶ

「お母さん来てくれないかな~」

 ・お母さんにかまってほしいという気持ち

 ・妹だけ宿題をみてもらっていた

 

ABC分析を整理

 A[直前]兄妹でテレビを観る[状況]妹は母と宿題をする

→B 兄が妹の髪の毛を引っ張る

→C 母が来て兄に注意をする 兄は母にかまってもらえる

 

上記の分析から、兄は『母にかまってもらう』目的を果たすために妹の髪の毛を引っ張り、母は兄の望み通りの対応をすることで、兄の行動を強化していたことが分かりました。

また、妹が母に宿題をみてもらっていたことが兄の行動を起こすきっかけとなっていました。

 

 

本書では、兄が妹の髪を引っ張るような行動を『行動問題』と記しています。

問題行動が対象者の不適応な行動を指しているのに対し、行動問題は不適応行動だけでなく、それを引き起こす原因や理由を含めた広い意味をもちます。

不適応行動そのものではなく、広い視野に立ってその根本原因に目を向けることが大切ですね。