私のポルタフォリオ

某音楽系大学を卒業後、府立支援学校教諭に。「継続は力なり」の精神で声楽も地道に続けております。時々奥さんが記事を書くこともあります。

いい声楽家になりたければ就職すべし!

最初に言っておきますが、著名なコンクールにバンバン通ったり、海外の歌劇場のオーディションに合格している方は対象外です。

そうではなく、私のように普通に音大・音楽系大学を卒業、あるいは卒業しようとしている方へのお話です。
 
お話の結論は題の通り、
いい声楽家になりたかったら、まずは就職して経済的基盤を作っておくのが一番!
なぜなら、声楽のスキルを活かせる安定的な仕事はないからです。
 
聖歌隊や合唱のトラはバイトとほぼ一緒、キャリアアップはあり得ません。
 
演奏家として雇われる機関も限られています。
びわ湖声楽アンサンブルはオーディションに合格し続けても最長5年雇用
神戸市混声合唱は更新期限はないものの、それだけではとても生活していける収入はありません。
 
合唱団を運営している方は経営者的側面があり、リスクがあります。
しかも、合唱団を支えているメンバーは往々にして中高年の方々、拡がりのあるビジネスとは言い難いです。
 
また、日本の声楽界では露出している人ほどお金がないという現状があります。
 
特にオペラ出演者に対する多額のチケットノルマ。
二期会の主役だったら100万円分のノルマは普通です。
たとえ売り切れたとしても、自身に入るギャラは無いに等しい額。
 
加えて、オペラ出演の準備のため、レッスン代・伴奏者謝礼・オーディション参加費・交通費・宿泊費etc.がかかり、それらは全て自己負担です。
 
私は経済的安定があるからこそ、長期的視点に立って音楽の本質に向き合っていける、と考えています。
 
「ボエームのようなハングリー精神が良い芸術を生むんだ!」という方もおられるかもしれませんが、現代の日本には合わないと思います。
なぜなら、スマホがあるから
スマホさえあれば、お金がなくても充分に娯楽を味わうことができますね。
 
ハングリー精神=芸術性は希望的観測すぎます。
それよりも、一度は結婚して親になることで、リゴレットやフォスカリ、シモンなどの父親の愛情を知ることの方が余程具体的です。
 
少し話が逸れました。
経済的に安定していたら、やりたくない歌の仕事は一切やる必要がありません!
聖歌隊や合唱のトラがやりたくて、声楽を続けているのですか?違いますよね。
私はたくさんの才能ある先輩方が大学の時より歌えなくなっている姿を見ました。
その最大の要因は、歌を本業にしているが故に何でも屋にならざるを得ず、自分のペースを崩したまま歌い続けているからではないかと思います。
自分に合ったレパートリーを守って続けられたらいいのですが、それはなかなか難しい実情があるのでしょう。
 
一昔前の大歌手たちの多くは、長い下積みを経て、世界で活躍しました。
私は今後も歌を本業にするつもりは一切ありませんが、自分のライフスタイルの範囲内で少しでも良い歌が歌えるよう、日々鍛錬していきます。
今の歌の師匠のもとで勉強し始めて12年、歌を通して自分と向き合うことでたくさんの発見がありました。
これからも歌を続けることで、自分と、自分の身内が幸せになってくれれば、これ以上に嬉しいことはありません!